研究課題について

一見するとテーマがバラバラのように見えるかもしれませんが, その理由はこのページの最後に書いてあります.
誤り制御方式
誤り訂正符号について,とくに, 符号を効率よく取り扱うための各種アルゴリズムの研究をしています. 最近とくに力を入れているのは, 低密度パリティ検査 (LDPC) 符号に対する符号化アルゴリズムの開発です. LDPC 符号は,シャノン限界に近い誤り訂正能力を発揮すること, 復号(誤り訂正)が非常に効率的に行えること等の理由により, 次世代デジタル通信系における誤り訂正符号として大きな注目を集めていますが, 符号化の計算量がボトルネックになる可能性が指摘されています. 我々の研究グループでは,LDPC 符号の特性を最大限利用することで, 効率よく符号化操作を行うためのアルゴリズム開発を行っています. また,Reed-Muller 符号,BCH 符号等のクラシックな線形ブロック符号について, その代数的性質やトレリス構造を利用することで, 効率よく復号を行う方法などについても研究を行っています.

暗号・セキュリティ
暗号やその関連技術を利用することにより, 安全で公平な仕組を構成する課題に取り組んでいます. 暗号というと,ファイルや通信路を覗き見から守るような, いわゆる「情報秘匿」が主な用途として考えられますが, 公開鍵暗号系や落し戸付き一方向性関数などをうまく利用してやれば, 情報秘匿以外の様々な目的を達成することができます. これまで,ネットワーク投票の際に,多重投票などの不正は防ぎつつ, 投票内容は誰にも(集計者やシステム管理者にも) 知られないような仕組を実現したり,暗号放送などにおいて, 番組毎・ユーザ毎に再生制御を効率よく行うための仕組などについて, 研究を行ってきました. また,計算量理論の成果を応用したスパムメイル送信抑制方式や, ユーザに負担をかけずに強力なユーザ認証を行う方式など, 斬新でオリジナリティの高いテーマも手がけています.

書換え型計算モデルと拡張オートマトン
チューリング機械やラムダ計算など, いわゆる「計算モデル」と呼ばれるものがたくさんあります. 「書換え型計算モデル」も,そのような計算モデルの一つですが, 現実世界との対応関係を比較的容易に付けやすい,という特長があります. たとえば, 「暗号化した情報を同じ鍵で復号すると元の情報になる」という性質は, "D(x,E(x,y)) → y" という書換え規則としてモデル化できます. 様々な操作・関数の意味を書換え規則として表現し, その規則のもとである種の方程式を解いてやることによって, たとえばシステムのセキュリティホールを自動的に発見したりでいます. ただし,方程式を計算機に解かせるためには, たとえば文字列や項(木)の無限集合を効率的に取り扱う必要があります. 我々の研究グループでは, オートマトン理論の諸成果を拡張し, 効率的に書換え型計算モデルを扱うための, いろいろなテクニックについて研究しています.

研究テーマの関連性について

計算の可能性に興味を持っており,関連するいろいろな話題に取り組んでいます. 情報科学の分野で計算可能性というと, どうしても計算量理論のお話を連想してしまいますが, 個人的にはもっと広い意味で,なんらかの計算ができる,できない, という点に興味を持っています. たとえば暗号など, 復号の「鍵」を知っている人は簡単に暗号文を解読(復号,計算)できますが, 鍵を知らない人は,暗号文を解読することは(事実上)不可能と考えられます. 鍵というわずかな情報により計算可能性を制御できるという意味で, 大変興味深い技術だと思います. また,誤り訂正符号についても, ある程度の誤り(消失)なら訂正して復号できるのに, その限界を超えると復号できなくなってしまうという意味で, 計算できる・できないというボーダー付近の振舞いが劇的に変化します. 誤り訂正符号は,通信系や記録系などに欠かせない実用的な技術ですが, その根本原理には数学的な美しさがあり, 好奇心をそそる研究課題です. また,最後にあげた計算モデルの話も, 「そもそも計算可能とは」という課題を突き詰めて考えると, 当然避けて通れない話ではないかと思います. ということで,一見バラバラに見える3つの研究課題の関係について, なんとなくわかって頂けたでしょうか.
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